最後の言葉/Last Word

ライトノベルの感想・書評を思うがままに

第七魔王子ジルバギアスの魔王傾国記 感想

こんにちは。

先月、友人に勧められて新たに読み始めたシリーズなのですが、とても面白かったので紹介をしながら面白かったポイントを書きたいと思います。

 

第七魔王子ジルバギアスの魔王傾国記は甘木智彬先生のオーバーラップ文庫の作品で、カクヨムで連載されていた作品の書籍化作品

 

物語のあらましは魔族と人族が戦う世界で、人族の勇者である主人公アレクサンドルが決死隊として魔王に挑むところから始まり、敗北したアレクサンドルが目覚めると、彼は魔王の息子、第七魔王子ジルバギアスとして生まれ変わっていた…というもの。

 

前世の記憶を持つジルバギアスは、魔族の王子でありながら魔王を打倒し魔族とその国である魔王国を滅ぼす事を決意するので、それがタイトルの魔王傾国記に繋がる

 

この作品の魅力はまず作り込まれた世界観。

人間と魔族以外もエルフやドワーフがいて…というよくある世界観がベースとしてありながらそれぞれの生活様式や文化がしっかりと設定されている。

例えば魔族は複数の士族がありそれぞれ魔法が使えて、武力を特に重視する。エルフは光と闇の2種族がいてそれぞれの対立してきた背景があって得意な事が違う、など

 

もう一つは主人公の葛藤とそれを越えて成長する成長物語の魅力

ジルバギアスは人族の勇者である前世の記憶を持ち、それをもとに行動する事になるが、魔族の王子としても大切に育てられており、特に母親を中心に周囲の血族からは大切に愛を持って育てられている。

魔族の王子として育てられるなかで与えられた魔族としての立場や、周囲の愛情と自分自身の前世の記憶から人族を虐げる事に対する葛藤がこの物語の主軸で、常に感情を揺さぶられる主人公の姿が非常に強烈に印象に残った。

 

転生を物語の導入として取り扱う作品は多いが、転生前と転生後の設定をしっかりと物語に組み込めると、物語に厚みが出て魅力的な物語が生まれるんだな、と今年読んだ2作品に対して強く思った。

 

魔族の王子として力を蓄えながら、魔王となって魔族を滅ぼす事へと物語は着々と進んでいるように見えるが、最終的に魔族の頂点に経つ時にジルバギアスは何を思って、どの立場から物語に決着をつけるのか、楽しみに見守りたい