最後の言葉/Last Word

ライトノベルの感想・書評を思うがままに

転生王女と天才令嬢の魔法革命

お久しぶりです。

最近色々とゲームをやっていたりでラノベを読む切っ掛けが無かったのだが、アニメ化を機に話題になっていた転生王女と天才令嬢の魔法革命をコミカライズ版から読んだところ、かなり面白かったので、そのまま文庫版も購入。一気にハマった

 

最新刊の6巻まで読み終わったので、物語の感想でも

 

本作は所謂悪役令嬢モノのテンプレ的な形式である、メインヒロインの公爵令嬢ユフィが婚約破棄をされて、それを主人公の王女である主人公のアニスが拾うところから始まる。

婚約破棄されるのが主人公か、ヒロインかという差分はあるもの、テンプレの形で読者をキャッチしながらも、その後の物語の展開はまるで異なっていて、読者の興味を惹かせる掴みをしながら、独自の展開に引き込む構成がとても上手いな、と感じた。

 

この物語はタイトルの魔法革命、にもある通り魔法がある世界の中で魔法を愛しながら魔法を使えない、転生者である王女のアニスと、魔法に愛されながら自分自身が希薄で、令嬢としての役割を果たすだけだったユフィの物語で、対比されるような2人が互いに支え合う物語。

 

最初はアニスが婚約破棄されたユフィを救い、ユフィを引っ張っていく形で物語が始まるが、3巻でそれが逆転し、アニスが自身の弱さを見せる中で、今度はユフィがアニスを引っ張っていき、アニスを救う展開が非常に心に刺さった。

 

百合モノに特段思い入れがあるわけではないのだが、主人公とヒロインが双方同じレベルで互いを助け合い、互いに平等な関係となる展開は百合モノだからこそ上手く出来る表現だと感じて、読んでいてとても尊いと思う。

 

最初はアニスがユフィを振り回す展開だったのに、2人が結ばれてからはユフィの方が積極的でアニスが基本受けに回るような2人の関係性は見ていてニヤニヤしてしまう。

 

本作はWeb版での連載もあり、文庫版を読んだ後にそちらも流し読みしたのだが、文庫版になるにあたって大筋の展開は同様なものの、大幅に加筆修正がされており、それによってかなり完成度が上がったと感じている。

 

特に特筆すべきはやはり3巻で、アニスが抱える苦しさの描写、ユフィの覚悟と思いが強烈に描写されており、2人の関係性やキャラクターとしての魅力がめちゃくちゃに詰まっていて、この作品に一気に惹きこまれた。

 

あとがきを読むに3巻時点で続きが出せるか分からず、その評判が良くて、それ以降の続きやアニメ化までが決まったようにも感じていて、それだけ3巻は魂が籠った力作であり、Web版の読者もここまで読んで欲しい。

 

もう一点、この作品の魅力的な意味を上げるのであれば、主人公のアニスが現世から転生した存在である事が、物語上で綺麗に意味を果たしている事。

転生設定は色んな作品で見るようになったが、それは本当に現世から転生した意味があるのか?思われる作品も多いと思っている。

 

アニスがなぜこれまで魔法を愛するかという行動原理にも大きく紐づいていて、アニスが抱える悩みなど、アニスというキャラクターの精神性を示すのに重要な要素を果たしている。

一方で前世の知識の活用、という点はそこまでフォーカスされず、前世でどんな人間だったかは描写されていないし、あくまで物語の舞台であるパレッティア王国の王女アニスというキャラクターとしてしっかりとキャラが描写されていて、転生者という設定が物語の重要なピースとしてハマっていたと感じた。

 

文庫版の6巻で大筋の話は完結し、アニスとユフィの物語は概ね完結したのだと思う。

あとがきで新たな展開がある、との事だったのでスピンオフや過去編、世界観を流用した新たなシリーズなどがおそらくアニメ完結と同時に発表されるんじゃないかと思っているが、せっかくなので久しぶりにアニメを楽しみながら、続きを待ちたいと思う。