最後の言葉/Last Word

ライトノベルの感想・書評を思うがままに

このラノ2023の投票

このラノ2023の期限が迫ってたので、悩んだ末に投票しました。

自分が投票したのは以下の5作品です

 

1位 転生王女と天才令嬢の魔法革命

2位 この△ラブコメは幸せになる義務がある

3位 第七魔王子ジルバギアスの魔王傾国記

4位 透明な夜に駆ける君と、目に見えない恋をした

5位 オーク英雄物語

 

今年読んだ作品で一番心に残ったのは「転生王女と天才令嬢の魔法革命」

アニメ放映と同時に漫画版を読み、そこから原作を読んだのだが、アニスとユフィの2人の両方が主人公としてちゃんと確立していて、互いに支え合う関係として成り立っている姿が本当に読んでいて尊かった。

 

百合モノでてぇてぇ、と尊い感情をミーム的に表現する事は多々あるが、本当に尊いという感情になった作品は転天が初めて。

やはりキーは3巻でこれまで引っ張り、振り回す立場であったアニスが弱みを見せた事に対して、ユフィが自ら行動してアニスを救い、最後に押し倒すシーンだと思う。

今年で言えば物語のクライマックスであり、一旦の結末を迎えたと言って良い6巻も集大成として素晴らしかったし、今後も応援していきたい作品

 

新作だと個別に記事では触れていないが、GA大賞の「透明な夜に駆ける君と、目に見えない恋をした」は短編のラブコメとして非常に完成度が高く、話に一気に引き込まれた

目の見えない、病弱なヒロインを題材にしたありふれたテーマではあるものの、ヒロインの心の揺れ動く描写や、好きになる過程が丁寧に示されていて、とても心に残る作品。

エンディングの締め方もとても良かったと思う。

 

ブコメだともう1作品、今年完結した「この△ラブコメは幸せになる義務がある」も挙げているが、やはりラブコメは作品の中のテーマの広がりが限定的なので、短~中編でしっかりと物語を構成した方が面白い作品になるな。と改めて感じる

 

今年は電撃文庫30周年という事もあり、まだまだ懐かしい作品が控えているので楽しみにしています

この△ラブコメは幸せになる義務がある。 感想

電撃文庫のラブコメ作品、この△ラブコメは幸せになる義務がある。が今月発売の4巻をもっと無事完結。

榛名先生、お疲れ様でした。

 

タイトルの通り、ダブルヒロインの作品で、ダブルヒロインの物語は主人公が誰を選ぶのか?という事に焦点が当たる作品が主だと思うのだけれど、本作はタイトルで清々しいくらいに明示している通り、最後はダブルヒロインの両方と結ばれる作品。

 

恋愛相談をしていくうちに、相手に惹かれていって…という話も王道ではあるものの、ヒロインの凛華がヒロインの麗良が好きだという事を、主人公に気づかれて相談して…という、ちょっと変わった恋愛相談から物語が動いていて、王道な大筋でありながら、この作品ならではの独自性が多くあってとても新鮮な気分で読めた。

 

本作はダブルヒロイン、というよりも正確にはこの3人の中での実質的な主人公はきっと凛華で、凛華が天馬との出会いをきっかけに成長していき、そして3人で幸せになるという答えを見つけるという物語。

 

最後のクライマックスで2人を呼び出し、ずっと心の中に秘めていた想いを打ち明けるシーンは、凛華の成長を感じると共に、その選択肢を選ぶ事が出来て3人にとって本当に良かったと思う。

 

エピローグで少し語られていた、3人のその後の生活も気にはなるものの、話がダレずに綺麗に完結まで持って行った榛名先生に感謝

次回作も楽しみにしています

第七魔王子ジルバギアスの魔王傾国記 感想

こんにちは。

先月、友人に勧められて新たに読み始めたシリーズなのですが、とても面白かったので紹介をしながら面白かったポイントを書きたいと思います。

 

第七魔王子ジルバギアスの魔王傾国記は甘木智彬先生のオーバーラップ文庫の作品で、カクヨムで連載されていた作品の書籍化作品

 

物語のあらましは魔族と人族が戦う世界で、人族の勇者である主人公アレクサンドルが決死隊として魔王に挑むところから始まり、敗北したアレクサンドルが目覚めると、彼は魔王の息子、第七魔王子ジルバギアスとして生まれ変わっていた…というもの。

 

前世の記憶を持つジルバギアスは、魔族の王子でありながら魔王を打倒し魔族とその国である魔王国を滅ぼす事を決意するので、それがタイトルの魔王傾国記に繋がる

 

この作品の魅力はまず作り込まれた世界観。

人間と魔族以外もエルフやドワーフがいて…というよくある世界観がベースとしてありながらそれぞれの生活様式や文化がしっかりと設定されている。

例えば魔族は複数の士族がありそれぞれ魔法が使えて、武力を特に重視する。エルフは光と闇の2種族がいてそれぞれの対立してきた背景があって得意な事が違う、など

 

もう一つは主人公の葛藤とそれを越えて成長する成長物語の魅力

ジルバギアスは人族の勇者である前世の記憶を持ち、それをもとに行動する事になるが、魔族の王子としても大切に育てられており、特に母親を中心に周囲の血族からは大切に愛を持って育てられている。

魔族の王子として育てられるなかで与えられた魔族としての立場や、周囲の愛情と自分自身の前世の記憶から人族を虐げる事に対する葛藤がこの物語の主軸で、常に感情を揺さぶられる主人公の姿が非常に強烈に印象に残った。

 

転生を物語の導入として取り扱う作品は多いが、転生前と転生後の設定をしっかりと物語に組み込めると、物語に厚みが出て魅力的な物語が生まれるんだな、と今年読んだ2作品に対して強く思った。

 

魔族の王子として力を蓄えながら、魔王となって魔族を滅ぼす事へと物語は着々と進んでいるように見えるが、最終的に魔族の頂点に経つ時にジルバギアスは何を思って、どの立場から物語に決着をつけるのか、楽しみに見守りたい

ライザのアトリエ1~3 感想

お久しぶりです。

 

別の事柄でアウトプットの時間を大分取られていたため、こちらのブログは殆ど更新出来ておらず。

 

久しぶりの記事ですが、少し趣向を変えて今回はガストのRPGである、ライザのアトリエシリーズの感想を書きます。

 

ライザのアトリエはアトリエシリーズという25年の歴史があるのRPGで基本的に三部作で毎回展開されるゲーム。

調合システムが魅力のゲームで、ストーリーを進める傍らで素材を集めて様々なアイテムを作って~という流れのゲームで、調合を始めたら2時間くらいずっと調合していたりなんて事もあるぐらい。

 

RPGとしてのボリュームは中程度で30時間程度もあればストーリーがクリア出来るようなゲームだが、忙しい社会人になってしまった今、これくらいのボリュームの方が手に取りやすいとも思っている。

 

ライザのアトリエシリーズアトリエシリーズの最新の三部作で、アニメ化も決まったヒット作。

 

特に主人公のライザが爆発的に人気が出た事もあり、アトリエシリーズの中では主人公が交代しない珍しいシリーズでもある。

 

本作、特に引き込まれたのがライザのアトリエ無印のストーリー

閉鎖的な田舎の村で生きる3人の少年少女が外からやってきた錬金術師に影響を受け、村の外へと踏み出し、冒険をすると共に世界の危機に迫っていく…というジュブナイル小説のようなテンプレのような物語なのだが、そのテンプレをきっちりと抑えていて、キャラの魅力に加えて、お約束の展開をしっかり描写するだけで、ここまで面白いのかと関心した。

 

一歩踏み出し、人知れずに世界を救った少年少女たちは、この経験を経て大人になり、村を飛び出してそれぞれの道に進む…というシナリオの最後の構成が本当に綺麗だった

 

実際に無印の脚本は灼眼のシャナ高橋弥七郎先生が担当していて、ラノベ読者の自分には刺さるシナリオだったのは間違いないと思う

 

ライザのアトリエ2は脚本家が代わり、3年後に王都で再会するも、皆それぞれ立場が変わっている中で、変わらない絆を描いた…事は良いと思う。

ただ単純なシナリオの大筋として、謎の精霊であるフィーを巡る物語なのに、フィーとの絆が育まれる描写が薄くて、シナリオに全然共感できなかったり、面倒な遺跡を巡るのに、遺跡に残された古代の民に起きた事がストーリーの本筋に何も関係無かったり、と全体的に何を示したいのかが微妙でどうしても評価はできなかった。

 

その評判をガストも承知していたのか、ライザのアトリエ3では脚本家が高橋弥七郎先生を再起用

 

ライザのアトリエ無印が少年少女が大人に成っていく物語だったが、ライザのアトリエ3は1人前になったライザがこの世界の錬金術師の宿痾と向き合っていく、という物語で1から続く「錬金術師」に出会った事で少女から大人へ成長して行ったライザが、「錬金術師」としてこの世界でやるべきゴールに到達する。という1から繋がるストーリーを上手く構成して収束させた、3部作の結末と言える内容にしっかりとなっていたと思う。

 

傲慢で過ちを繰り返してきた錬金術師達の中で、最後にライザが師に誓った「良き錬金術師」でありながら、この世界の錬金術師としての終着点にたどり着いた。

錬金術をテーマにしたアトリエシリーズの中でも、しっかりと錬金術師の有様を描いた良いシリーズだったと思う。

転生王女と天才令嬢の魔法革命

お久しぶりです。

最近色々とゲームをやっていたりでラノベを読む切っ掛けが無かったのだが、アニメ化を機に話題になっていた転生王女と天才令嬢の魔法革命をコミカライズ版から読んだところ、かなり面白かったので、そのまま文庫版も購入。一気にハマった

 

最新刊の6巻まで読み終わったので、物語の感想でも

 

本作は所謂悪役令嬢モノのテンプレ的な形式である、メインヒロインの公爵令嬢ユフィが婚約破棄をされて、それを主人公の王女である主人公のアニスが拾うところから始まる。

婚約破棄されるのが主人公か、ヒロインかという差分はあるもの、テンプレの形で読者をキャッチしながらも、その後の物語の展開はまるで異なっていて、読者の興味を惹かせる掴みをしながら、独自の展開に引き込む構成がとても上手いな、と感じた。

 

この物語はタイトルの魔法革命、にもある通り魔法がある世界の中で魔法を愛しながら魔法を使えない、転生者である王女のアニスと、魔法に愛されながら自分自身が希薄で、令嬢としての役割を果たすだけだったユフィの物語で、対比されるような2人が互いに支え合う物語。

 

最初はアニスが婚約破棄されたユフィを救い、ユフィを引っ張っていく形で物語が始まるが、3巻でそれが逆転し、アニスが自身の弱さを見せる中で、今度はユフィがアニスを引っ張っていき、アニスを救う展開が非常に心に刺さった。

 

百合モノに特段思い入れがあるわけではないのだが、主人公とヒロインが双方同じレベルで互いを助け合い、互いに平等な関係となる展開は百合モノだからこそ上手く出来る表現だと感じて、読んでいてとても尊いと思う。

 

最初はアニスがユフィを振り回す展開だったのに、2人が結ばれてからはユフィの方が積極的でアニスが基本受けに回るような2人の関係性は見ていてニヤニヤしてしまう。

 

本作はWeb版での連載もあり、文庫版を読んだ後にそちらも流し読みしたのだが、文庫版になるにあたって大筋の展開は同様なものの、大幅に加筆修正がされており、それによってかなり完成度が上がったと感じている。

 

特に特筆すべきはやはり3巻で、アニスが抱える苦しさの描写、ユフィの覚悟と思いが強烈に描写されており、2人の関係性やキャラクターとしての魅力がめちゃくちゃに詰まっていて、この作品に一気に惹きこまれた。

 

あとがきを読むに3巻時点で続きが出せるか分からず、その評判が良くて、それ以降の続きやアニメ化までが決まったようにも感じていて、それだけ3巻は魂が籠った力作であり、Web版の読者もここまで読んで欲しい。

 

もう一点、この作品の魅力的な意味を上げるのであれば、主人公のアニスが現世から転生した存在である事が、物語上で綺麗に意味を果たしている事。

転生設定は色んな作品で見るようになったが、それは本当に現世から転生した意味があるのか?思われる作品も多いと思っている。

 

アニスがなぜこれまで魔法を愛するかという行動原理にも大きく紐づいていて、アニスが抱える悩みなど、アニスというキャラクターの精神性を示すのに重要な要素を果たしている。

一方で前世の知識の活用、という点はそこまでフォーカスされず、前世でどんな人間だったかは描写されていないし、あくまで物語の舞台であるパレッティア王国の王女アニスというキャラクターとしてしっかりとキャラが描写されていて、転生者という設定が物語の重要なピースとしてハマっていたと感じた。

 

文庫版の6巻で大筋の話は完結し、アニスとユフィの物語は概ね完結したのだと思う。

あとがきで新たな展開がある、との事だったのでスピンオフや過去編、世界観を流用した新たなシリーズなどがおそらくアニメ完結と同時に発表されるんじゃないかと思っているが、せっかくなので久しぶりにアニメを楽しみながら、続きを待ちたいと思う。

君はこの「悪【ボク】」をどう裁くのだろうか?

君はこの「悪【ボク】」をどう裁くのだろうか? 読了

 

電撃文庫で12月刊行の最近ではおさまけで有名な二丸 修一の新作

二丸先生は最近他にも呪われて純愛、という新作も出していて、新しいシリーズをたくさん出しているが、ラブコメのイメージが強い中で、異色の異世界転移物語

 

本作のあらすじとしては、殺人衝動を持つ完璧超人の主人公の高城誠司が、高校入学を機に初めてライバルと言えるような親友である菅沼拓真と出会い、友情を深めていく。

その中である日、誠司は拓真に妹を殺したのか?という事を問い詰められ、それに返そうとした瞬間、2人は異世界へと転移する

 

異世界に転移した先で、それぞれ皇位争いをする第一王子と第二王子の元で成り上がり、皇位争いの側で拓真の妹の真相が明らかになっていく

 

主人公の誠司は意志の強さを魂の炎として見る事が出来る異能を持っており、その炎が消える瞬間を楽しみにしちえる快楽殺人鬼

異常者である事を自覚していて、その上で頭もめちゃくちゃ回るクレバーな面も持ち、はっきりとした美学も持つ、悪を体現したとても魅力的なキャラクター

 

悪人である側面が一章からこれでもかというくらい表現されていて、その中でも殺人鬼としての美学が一貫しているのがとても良い

 

殺人鬼としての側面はもちろん、その殺人鬼である自分を動かしやすくするように王子を操って立ち回る姿もかなり上手く、ここまでの悪人としての様を主人公として描けたラノベは無いんじゃないかと思う

 

正義漢を体現したような親友の拓真との関係性も良く、拓真自身が誠司の歪んだ精神を理解した上で、それでもなお互いが最大の理解者であると察せられる事が素晴らしい

 

クライマックスでのこの2人の対決の結末を経て、誠司が本当に抱えていた想いや、決着のきっかけとなるメインヒロインとの関係など、伏線を貼った上での最後の展開もかなり綺麗で、「悪」である主人公がどんな結末を迎えるのか、ぜひ読んで確かめて欲しい

この△ラブコメは幸せになる義務がある。3 感想

コロナに罹患してダウンしてしまい全然ラノベが読めていませんでした…

 

電撃文庫の期待している新シリーズラブコメ、 この△ラブコメは幸せになる義務がある。の3巻

 

2巻で麗良が告白してキスをした現場に居合わせた凛華が、自分自身の麗良と天馬に対する想いをはっきりと確認するのが第3巻

 

前半の衝撃的な場面を目撃して完全に抜け殻になっている凛華と、後半の正気を取り戻し、その反動でこれまでにない麗良好き好きモードの気持ち悪さを見せてくるところのギャップが面白い

 

結局最初から最後まで、天馬は振り回されているだけだったが、凛華がちゃんと自分の中で折り合いをつける事ができ、物語が次のステップに進みそう

 

4巻以降、いよいよ凛華と麗良の関係性も動き始めそうでとても楽しみ