最後の言葉/Last Word

ライトノベルの感想・書評を思うがままに

オーク英雄物語

最近更新が滞っていたので余裕があるタイミングでもう一作好きな作品をピックアップ

 

異世界転生の始祖的な作品といえ、無職転生で知られる理不尽な孫の手先生の新作で、現在なろうで連載中、富士見ファンタジア文庫でも文庫版が発売中の作品

 

幾多の種族が入り乱れる世界で、オーク族の稀代の英雄である主人公のバッシュが、こっそりと童貞を捨てるために諸国に嫁探しの旅に出るのだが、行く先々で様々なトラブルに遭遇していく物語

 

まず、世界観の設定が本当に凄い。亜人種という考え方が無く、オークもあくまでこの大陸で生きる人の種族の一つ(普通の人間はヒューマンという種族)、という世界なのだが、一般的なファンタジーのオークのイメージを踏襲しながらも、オークの強さや誇りといった事が描写されていて、オークそのものがめちゃくちゃカッコ良い。

 

オークの誇りを示すために、ウォークライを上げて戦いに挑んでいく様は必見。かつてここまでオークをカッコ良く描いた(そもそも描こうとした)作品は無いのでは

 

他にもサキュバスはあくまで食事として性行為をする、ビースト(様々な動物の亜人種)は多産で女形家族等、異種族ならではの生態や文化の違いなどが、丁寧に作り込まれていて、ファンタジー物としてワクワクする部分が多い

 

もう一つのポイントとして、副題の「忖度列伝」が示す通り、あまり口が上手でなく、異種族の文化に疎いバッシュが行動した結果を、周囲が勝手に忖度して、良い方向に曲解していくのがめちゃくちゃ面白い。

 

バッシュを忖度して持ち上げる描写も、本人の前で直接持ち上げるのではなく、周囲が勝手に納得する形で、最後まで認識とズレている事が多いのも面白いし、実際にバッシュが本人が自覚しないうちに、それだけ大きな事を各地で成しているため、読んでいて作為的な持ち上げられ方だとも感じない

 

第5章が昨年なろうで執筆されたあと、無職転生のアニメ等で忙しかったのか、1年ほど更新が止まっていたが、今月第6章が更新され、4章も文庫版が今月発売されるので、カッコ良いオークや、異世界ファンタジー冒険譚に興味がある方は是非読んでみて欲しい