最後の言葉/Last Word

ライトノベルの感想・書評を思うがままに

竜の姫 ブリュンヒルド 感想

竜の姫 ブリュンヒルド 読了

28回電撃文庫大賞銀賞作品の竜殺しのブリュンヒルドの続編。

 

前作が非常に綺麗に単巻で纏まっていたため、面白いけど続編は出ないだろうなあと思っていたところ、まさかの続編が出て、どうやって話を展開するんだろう…と思っていた。

本作の舞台は前作の700年前で、前作の主要人物である竜殺しの一族がどのように生まれたかが描写される。

 

竜が神の使いとして崇められている王国にて、竜に仕える少女が竜の真実を解き明かして、真実を知った上で人間としてどのような選択を取って行くのが物語で描かれる

 

前作のテーマは竜が持つ我が子への愛情と、親代わりの竜を殺されたブリュンヒルドの愛情、竜殺しの一族の家族愛情、それぞれで異なる愛情表現が交差して、様々な愛の形を探る物語だったが、今作もまた同様に4人の登場人物の抱える愛の想いが、交差し、その結果として竜殺しの一族がどのように生まれたのかが描写される、愛をテーマとした物語

 

4人それぞれの想いの形があり、どの想いも理解出来る。本当に愛というのは色んな姿を持つのだな、と読後にしみじみと思った。

 

Twitterにも書いたが、お気に入りのキャラクターはブリュンヒルドの従者、ファーヴニル。伝承上の悪竜の名を持ち、愛を知らずに育った少年が、物語の行く末にたどり着いた結論と、その最後はとても惹かれるものがあり、ぜひ読んで確かめて欲しい

オーク英雄物語

最近更新が滞っていたので余裕があるタイミングでもう一作好きな作品をピックアップ

 

異世界転生の始祖的な作品といえ、無職転生で知られる理不尽な孫の手先生の新作で、現在なろうで連載中、富士見ファンタジア文庫でも文庫版が発売中の作品

 

幾多の種族が入り乱れる世界で、オーク族の稀代の英雄である主人公のバッシュが、こっそりと童貞を捨てるために諸国に嫁探しの旅に出るのだが、行く先々で様々なトラブルに遭遇していく物語

 

まず、世界観の設定が本当に凄い。亜人種という考え方が無く、オークもあくまでこの大陸で生きる人の種族の一つ(普通の人間はヒューマンという種族)、という世界なのだが、一般的なファンタジーのオークのイメージを踏襲しながらも、オークの強さや誇りといった事が描写されていて、オークそのものがめちゃくちゃカッコ良い。

 

オークの誇りを示すために、ウォークライを上げて戦いに挑んでいく様は必見。かつてここまでオークをカッコ良く描いた(そもそも描こうとした)作品は無いのでは

 

他にもサキュバスはあくまで食事として性行為をする、ビースト(様々な動物の亜人種)は多産で女形家族等、異種族ならではの生態や文化の違いなどが、丁寧に作り込まれていて、ファンタジー物としてワクワクする部分が多い

 

もう一つのポイントとして、副題の「忖度列伝」が示す通り、あまり口が上手でなく、異種族の文化に疎いバッシュが行動した結果を、周囲が勝手に忖度して、良い方向に曲解していくのがめちゃくちゃ面白い。

 

バッシュを忖度して持ち上げる描写も、本人の前で直接持ち上げるのではなく、周囲が勝手に納得する形で、最後まで認識とズレている事が多いのも面白いし、実際にバッシュが本人が自覚しないうちに、それだけ大きな事を各地で成しているため、読んでいて作為的な持ち上げられ方だとも感じない

 

第5章が昨年なろうで執筆されたあと、無職転生のアニメ等で忙しかったのか、1年ほど更新が止まっていたが、今月第6章が更新され、4章も文庫版が今月発売されるので、カッコ良いオークや、異世界ファンタジー冒険譚に興味がある方は是非読んでみて欲しい

最強女師匠たちが育成方針を巡って修羅場

更新が滞っていたので最近読んで面白かった作品からピックアップ

 

スキルがものをいう世界で、スキルが発現しなかった14歳の主人公が3人の女師匠に拾われ、甘やかされながらも修行を受けて強くなっていく、ファンタジー冒険譚

 

スキルがベースな世界というありがちな設定ながら、世界観の中でのスキルの取り扱いや、その発現方法を独自のものに落とし込んでいて、既視感があるような物語になっていないあたり、複数のヒット作を持つ、赤城大空先生の実力を感じる

 

3人の女師匠は全員かっこよく魅力的であり、それでいて主人公のクロスも、ちょっと鈍感気味なところはあるものの、純真で可愛いところがあり、女師匠達が可愛がるのも良く分かる。

 

修行のシーンも世界観を上手く説明しながら、それでいて徐々にどうやって強くなっていったかが丁寧に描写されていて良い

 

まだ2巻の途中を読んでる最中であり、正直まだタイトルほどの修羅場、には全然なっていない気もするが、この調子だとどんどん出てくるヒロイン達に好かれてハーレム主人公となり、表面上は優しくも裏では修羅場化していくんだろうなあ…笑

 

 

女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話 6 感想

色々と立て込んでて先週は更新できず

 

女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話

通称ありおとは百合ラブコメをひたすら書き続けるみかみてれん先生のシリーズ

 

正直あまり個人的にはピンと来るようなジャンルじゃなかったのだけれど、みかみてれん先生のシリーズはどれもハマって楽しく読んでいる

 

6巻は2人の関係性をカミングアウトしたなかで、鞠佳がそれを認めさせるために奮闘する、という話なのだが、最初はタイトルの通り、ひたすらに絢が押していた展開の中で、5~6巻で鞠佳も同じように強い気持ちを持っているんだな、という事がはっきりと感じられた

 

鞠佳のような、陽キャでクラスのザ・中心人物!みたいなキャラクターはライトノベルだと結構珍しい造形のメインキャラだと思うのだが、そこを上手く魅力的に描けているのはこの作品の魅力だと思う

りゅうおうのおしごと!

今週は自分が好きなシリーズの紹介。

 

りゅうおうのおしごと!の自分が感じている魅力についてを紹介したいと思う。

今作はアニメ化もしており、現在刊行中のライトノベルでもトップクラスにメジャーな作品。なのであらすじなどは割愛して、自分が本作で魅力的だと感じている部分をいくつか紹介したい

 

1つ目はキャラクターの造詣の深さ。

本作は非常に登場人物が多く、主要キャラ以外も多くのサブキャラクターが登場している。

その中で、各巻で主要キャラクターを中心に、サブキャラクターの誰かしらにスポットが当たって…という構成が基本なのだが、とにかくスポットが当たる範囲がとても広い事に加えて、それぞれのキャラクターがしっかりと特徴づけられているのが凄い。

挿絵が限られるライトノベルでは、登場キャラクターが多いと時々スポットが当たるキャラクター、どういうキャラクターだったっけな…と思い返す事が多くなるのだが、本作はキャラの特徴付けがしっかりとしていて、久しぶりにスポットライトが当たっても、すぐにどんなキャラだったかを認識できるくらい、多くのキャラが特徴を持って描写されている。

それでいて、各キャラの芯の部分や、テーマ、将棋にかかわる熱い想いの描写に圧倒的な力がある

 

2つ目は挿絵の使い方

りゅうおうのおしごと!は挿絵の使い方が上手い。特に特徴的なのは対局のクライマックスでの描写で見開きの右端に1人、左端にもう1人を描写して、その間の文章でそれぞれの想いを綴る描写は、将棋盤を挟んで対峙している姿を視覚的にも連想させる。

見開きを使った描写などはこれまで色んなラノベでされてきたとは思うが、見開きの両端を上手く使った描写は自分が知る限り、りゅうおうのおしごと!が初で、その描写がとにかく物語にハマっている。

最近だと他にも連れカノはこのような描写を結構クライマックスで使ってたりするかもしれない。ライトノベルと小説の違いである挿絵を、上手く使ったアプローチは他にも増えていくと表現の幅が広がって良い

 

自分が主に感じているりゅうおうのおしごと!の魅力はこの2点

もちろん、熱い想いの描写やコメディパートの面白さ、しらび先生のキャラデザなどと他にも魅力的な部分はたくさんあるのだが、ライトノベルの構成としてはこの2点が本当に抜けて凄いなと思った。

 

第三部もいよいよ佳境に近づき、そろそろ物語の終わりも見えてきたが、このまま最後まで楽しませて欲しい

親友歴五年、今さら君に惚れたなんて言えない。 感想

久しぶりに新刊の感想でも。

 

親友歴五年、今さら君に惚れたなんて言えない。

こちらスニーカー文庫の10月新刊であり、「とってもカワイイ私と付き合ってよ!」の三上こた先生の新作になる

 

作品のあらすじとして、タイトル通り小学校から5年間の付き合いを続けてきた、親友に対して高校進学を機に恋愛感情を持ち、告白しようと頑張るのだが、距離感が近づきすぎて上手く行かず、、、一方悩んでいるところに対して、ヒロインも同じ事を悩んでいて、、、というもの。

 

両片思い+幼馴染という事で、既に付き合ってるのでは?と思わせるような自然なイチャつきっぷりや、互いに色々と策を巡らせるけど上手くいかないじれったさなど、テンプレのポイントはしっかりと抑えられている。

特に三上こた先生はカップルの掛け合いの描写がとても上手くて、見ていて思わずふふっとなるようなコメディ色高めのテンポが良い会話が、2人の仲の良さを面白く描写出来ていると思う。

 

そんな中で、5年続けた親友の2人だが、中学卒業を機にそれぞれ打ち込んできたソフトボール、野球を辞めており、辞めるきっかけとなった思いやす、互いに対する引け目といった、互いに隠している後ろめたい感情もそれぞれ抱えている。

 

親友だからこそ言えない、そんな葛藤を乗り越えて絆が深まった2人の今後の物語を楽しみにしている

ぼくたちのリメイク 11 感想

ぼくたちのリメイク11巻 読了

 

10巻にて学生編が終了し、結局4年間のやり直しを経てもクリエイターとしての道を諦めた恭也が、河瀬川の誘いを切っ掛けにまた現場へと帰ってくる

 

一線を引くことを選んだ恭也がこれまでの仲間たちからのメッセージを受け取り、また立ち上がっていく姿はテンプレ的でありながら盛り上がる展開だった

特に貫之の小説越しのメッセージが徐々に届き、最後にシノアキが待っていたよ。と迎えるシーンはとても熱い展開で良い

 

木緒なち先生と言えば、私自身が蒼の彼方のフォーリズムの大ファンなために、個人的にはエロゲライターとしての印象が非常に強く、本作も全体的にエロゲに近いような話の構成を感じた。

IFルートの設定や、エピローグ後に最終章を迎える構成は比較的定番の手法だと思うが、それゆえに盛り上がりの演出が上手だと思う。

 

作品の終着点として、10巻で力不足で手を放し、リジェクトされた作品を、現場から離れていた恭也が纏め上げる事に説得力を持たせ、最後を迎えられるかは率直な疑問

 

変わってしまったサクシードの2人の背景と、最後に松平が問うた事がおそらく答えになるのだろうが、しっかりとそこを最終巻で纏め上げられるか、期待しながら待っていたい

 

しかし河瀬川もシノアキも再起の切っ掛けと、おかえりを言う役目とメインヒロイン級の役割が与えられているのに対して奈々子はちょっと差が…

まあ2人はIFの未来とβでそれぞれ結ばれたようなものだから当然(?)なのかもしれない

 

個人的には河瀬川が良いコンビとしての面も含めて好きなんだけれど、ヒロインレースを競うような作品でも無いとは思う…が、せっかくなので最後にIFや短編集で結ばれた先の可愛い姿も見てみたい