最後の言葉/Last Word

ライトノベルの感想・書評を思うがままに

どうか俺を放っておいてくれ なぜかぼっちの終わった高校生活を彼女が変えようとしてくる

第13回GA文庫大賞の特別賞受賞作

 

ジャンルとしては青春ラブコメで高校3年間をぼっちとして過ごした主人公が、卒業式にクラスの人気者だったヒロインをトラックから庇った事をきっかけにタイムリープし、3年間をやり直すというもの。

 

作者の相崎壁際先生が、他作品を引き合いに出してもらっても全然かまわないと言及されていたので、例に挙げると俺ガイルや弱キャラ友崎くんを彷彿させるようなジャンルだろうか。

もうちょっとマイナーな作品だと物理的に孤立している俺の高校生活あたりが近いかもしれない。

 

主人公、七村穂高は3年間をぼっちで過ごしたものの、それに強い後悔を抱いている節もなく、3年間をやり直す事になって一念発起、、、という事もなくまた同じように過ごそうとする。

そこにタイトルの通り、ヒロインの花見辻空が絡んできて、互いに影響を徐々に与え合いながら、少しずつ高校生活を変えていく。

タイムリープものは基本的に過去の後悔を解決したい、という主人公の意志が話の中心になる事が多いが、全くそんな事が無いというタイムリープものとして見た場合には珍しい話。

 

本作品の妙として、タイムリープの設定を上手く展開に組み込んでいる事だと思っており、七村穂高はあくまで同様の生活を送ろうとするが、タイムリープした故の精神的な達観性や、未来を知っているが故に心情が揺れ動く描写が構成として綺麗にハマっている。

タイムリープした設定そのものは2巻の主題にはあまり絡んでいなかったものの、ぼっち系主人公×世話焼きヒロイン×タイムリープというこれまで使われてきたお題を上手く組み合わせ、オリジナル色が強く感じられる作品へときっちり昇華出来ているのが本作の面白さの根幹ではないか。

 

3年間ぼっちだった主人公と、クラスの人気者だったヒロイン。と性格も考え方も真逆の2人が徐々に相互理解を踏まえながら関係を深めていく描写も非常に丁寧であり、今後の展開に期待したくなる新シリーズだと思う。

 

1巻が出た頃から存在は認識していたが食指が動かず、2巻が発売したタイミングでなんとなく読むものが無くて1巻から買ったのだが、もっと早く読んでいればと後悔。1巻発売当時に気づけていればこのラノとかにも投票出来たのになあ。

 

今年は自分の中で新作ラブコメにかなりのヒット作が多い当たり年だったが、下半期になって更に当たりの作品を引けるとは。それらを紹介したい気持ちでブログを書きたくなるくらいだったので、本当にいい年だった