最後の言葉/Last Word

ライトノベルの感想・書評を思うがままに

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン

あけましておめでとうございます。

 

新作の感想だけでなく、時々は思い入れのある作品も語っていきたい。

1作目は電撃文庫の「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン

 

作品のジャンルとしてはファンタジー戦記もの。

精霊が人のパートナーとして活きる世界にて、腐敗した大国のカトヴァーナ帝国を舞台に士官学校の受験生であるイクタ・ソロークが、受験会場の向かう船が遭難し、同乗していた第三皇女のシャミーユと共に、敵国であるキオカ共和国に流れ着いた事をきっかけに、動乱の世に巻き込まれていく。

 

この作品の魅力は何より6人の魅力的なメインキャラクターにあるだろう。

 

この世界で「科学」を提唱した科学者アナライの弟子であり、怠けるための努力を惜しまない怠け者ながら、群を抜いた知略を持つ主人公のイクタ・ソローク

 

そんなイクタの幼馴染であり、無二の理解者でもありながら、軍人としての有様は真逆で模範的な帝室に絶対の忠誠を誓う軍閥御三家の筆頭であるイグセム家の長女、ヒロインのヤトリシノ・イグセム

 

もう一つの軍閥御三家であるレミオン家の三男であり、軍人に向かない優しい性格ながら自らの家に課せられた使命を向き合おうとするトルウェイ・レミオン

 

軍閥の一門で強い上昇志向を持ち、仲間であるヤトリシノ、トルウェイらへの対抗心を燃やしているが、めげずに追い付こうとする少年のマシュー・テトジリチ

 

優秀な衛生兵であり、優しく芯が強い性格の少女で仲間からの信頼も厚いが、その裏に大きな秘密を持つハローマ・ベッケル

 

そしてもう一人のヒロインである、帝室の咎を背負う憂国の幼い第三皇女シャミーユ・キトラ・カトヴァンマニニク

 

彼ら6人が動乱の世の中で絆を深め、やがて世界の謎も明らかになる、、、、といった物語なのだが宇野先生が描く世界観と別々の魅力を持つ上記の6人の生き様にとにかく引き込まれた。

 

特に特筆すべきはイクタとヤトリの深い絆。彼ら2人だけは物語開始前から深い絆で結ばれており、誰よりも互いの事を信頼している。

そんな2人が帝国の咎を背負ったシャミーユに対して抱いた愛情が、世界を動かしていく事になる。シャミーユを救うために2人が取った行動と、そこに至るまでの描写、展開が素晴らしく、物語に没頭させられた。

 

 

動乱の世の中を生きる戦記物だけあって、世界は優しくない側面も多々あるが、その中で生きる彼らの壮大でドラマティックなストーリー、是非時間があったら手に取って読んで頂きたい。