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カノジョの妹にキスをした。4巻感想

注:本記事はカノジョの妹にキスをした。4巻までのネタバレが含まれます

 

 

 

 

カノジョの妹にキスをした。4巻読了。

最初から最後まで、ダレることなくフルスロットルで駆け抜けた、浮気をテーマとして選んだ「純愛」のラブコメ海空りく先生、お疲れ様でした。

 

優しくもあり、見栄っ張りな部分がある博道と依存心が強い晴香に対して、覚悟を持って愛を掴み取ろうとする時雨の精神的な強さが際立っていて、時雨というキャラクターの魅力が詰まった話だったと思う。

 

博道の初めて出来た彼女に弱音を見せたくない、という部分は等身大の高校生の男子ならそうだよなあ、と共感出来る部分があって、優柔不断だと責められないし、晴香も物語の都合上で悪く描かれた部分もあるだろう。最後に二人が別れたときの言葉通り、もっとちゃんと話していれば上手く行ったのだろうな、というのはまさにその通りだと思うし、実際にこの世代の最初の恋愛なんて、本当にこんなケースが多いんじゃなかろうか。

 

それに対して1巻から、信頼・友情・親愛・自らの価値観、それら全てより優先される強烈な執着を持つ事を自覚して『恋』を抱いた時雨が1枚も2枚も上手で、先に進んでいた。

 

3巻で博道が時雨を選ぶことを自覚した以上、4巻で晴香と時雨が対決するのは必然で、決して大団円は無いだろうな。と思っていたのだが、正直駆け落ちエンドくらいしか想像出来なかったなかで、最終的に記憶を失った晴香に対して、全て表面的には何もなかったかのように振る舞い続けるという後味の悪さが残るエンディングは驚かされた。

 

博道が晴香に別れを告げた事で、晴香が自殺を選んだかもしれなかった、そんな状況で記憶を失った晴香に真実をどうしても伝えられなかった博道は理解出来るし、時雨も自らが言っていた通り、表面的な恋人や結婚なんて関係に囚われることはなく、ただ愛さえあれば良いと言い続けていたので行動に納得感はある。

それでもエンディングですり減っていて、遠からず壊れてしまいそうな博道は見ていて辛かった…せめて時雨と二人でいるときだけ、幸せな夢の中にいて欲しい

 

 

本作は構成が非常に秀逸だったと思っている。

時雨が恋愛感情を抱き物語が動き出した1巻

時雨がアプローチを仕掛け、博道と晴香の関係に綻びが生まれて物語が加速していく2巻

博道が時雨を選んだ物語の転機となった3巻

晴香に別れを告げ、時雨を選び物語が終わった4巻

 

それぞれが起承転結にそれぞれ対応していて、大変良く練られたプロットだと思った。ラブコメは世界の広がりが少なく、かなりダレやすいジャンルでそれがラブコメラノベの大きな課題だと自分は思っているのだが、本作はしっかりと全体構成が寝られていて、ダレることなくフルスロットルで走りきった事がめちゃくちゃ評価が高い。

 

シリアスな部分以外にも、純粋に時雨というキャラクターが可愛い。4巻でついに博道の愛が自分に向き、喜びを隠しきれない時雨は本当に可愛かった。特に誕生日に指輪を渡したシーンは最高。

 

時雨は可愛さと強さの両方を秘めた最強ラブコメヒロインだと思う。本当に良いヒロインだった。

 

 

改めて、カノジョの妹にキスをした。本当に面白い作品でした。

海空りく先生、お疲れ様でした。次回作も期待しています