最後の言葉/Last Word

ライトノベルの感想・書評を思うがままに

ブービージョッキー

7月に2巻が発売中した第十三回GA文庫大賞銀賞の新作

 

競馬を題材にした熱血青春ラブコメ

 

競馬の中でも、馬を中心としたブラッドスポーツとしての側面より、タイトル通りジョッキーに比較的スポットライトが当たっていて、ジャンルもラブコメよりターフを駆けるスポコンものの方が近い

 

ストーリーのあらすじとしては、19歳で若くしてダービージョッキーとなった主人公の風早颯太が、その後スランプに陥るところから始まり、騎手免許を返納しようと思っていたところに、突然の美女の馬主の聖良が超良血の素質馬セイライッシキと共に現われて、住み込みでサポートしてくれる事になり、二人三脚で立ち直って…というお話

 

話の展開は少し力業な部分を感じるが、それを差し引いても本作が何よりも魅力的なのは競馬の熱いレースシーンと、そこに魂をかけるジョッキー達の生き様の描き方

 

0.5トンの巨体が時速60kmでぶつかり合いながらも疾走している競馬のレースの迫力を余す事なく描写出来ていて、スポコンライトノベルとしての完成度は非常に高い

 

一方でジョッキーに対する描写も深い

・厳しい体重管理に始まる、アスリートとしてのトレーニン

・新人から超ベテランと同時に勝負する事になり、更に強いジョッキーに強い馬が集まっていくという格差社会

・生身で時速60kmの競走馬を駆り、生傷は絶えず命の危険すら隣り合わせのレースに身を置く事になる苛烈な環境

 

このような世界でそれでも憑りつかれたかのように、ジョッキーという生き様に吸い寄せられる彼ら、彼女らをここでしか行けていけない呪い、という表現がとても深く胸に刺さった。

 

緩急の緩であるコメディ的な部分も非常に良く、個人的なお気に入りは2巻で登場した新ヒロインの秋桜。小悪魔系後輩を気取り、先輩である主人公の颯太を誘惑しようとしてから回りしたりするポンコツさが可愛いし、それでいて最後は颯太の手を取るのではなく、1人のジョッキーとして立ち向かう芯の強さとジョッキーとしての魂のギャップが魅力的

 

競馬に欠かせない要素である人馬の絆もしっかりとリアルティを感じつつも、熱い物語にしっかりと組み込まれている。

 

3巻までがおそらくセイライッシキの2歳戦線という事になり、物語の起承転結でいう起の部分のクライマックスになるのではと想像ができ、更なる熱い物語を期待したい

 

 

 

 

余談だが、この作品を読んだ感想としてGA文庫の大人気作「りゅうおうのおしごと!」と非常に構成が近いな、と感じた

 

・若くして大きなタイトル(ダービーor竜王)を取ったがその後スランプに落ちた主人公

・押しかけ気味に同居する事になった過去に約束をしたヒロインによるサポート

・特異な職業(棋士orジョッキー)の生き様と真剣勝負の熱い描写

 

同じGA文庫の作品だし、GA文庫の編集部のスタイルなのか、偶然なのかは分からないけど…

 

こういう表現を嫌がる作者の方もいると思うが、あくまで純粋に抱いた感想として。

私自身はりゅうおうのおしごと!も大好きな作品であり、同等以上に熱い、楽しみな作品として本作も期待している